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コース14 — 日本と世界の違いから学ぶマーケティング

デフレマインドと価格感覚 — 30年で染み付いた「安くて当然」

所要時間: 8分  |  更新: 2026-06-22

コース14 — 日本と世界の違いから学ぶマーケティング

このレッスンで学べること:

  • 日本のデフレマインドがどのように形成されたか
  • 価格感覚の違いが欧米と比べて何を意味するのか
  • 「値上げ」への抵抗が強い日本市場でどう価格戦略を立てるか

世界で唯一「給料が下がり続けた国」

過去30年で世界各国の平均賃金はどのように変化したでしょうか。

OECDのデータによると、1990年代から2020年代にかけて、アメリカは約2倍、ドイツは約1.7倍、韓国に至っては約3倍以上に上昇しています。一方、日本はほぼ横ばい、もしくはわずかに低下——先進国でほぼ唯一、賃金が上がらなかった国です。

この30年の経験が、日本人の価格感覚に根深い影響を与えています。

デフレマインドの形成過程

1990年のバブル崩壊後、日本経済は長期停滞に入りました。企業はコスト削減に走り、価格競争が激化。消費者は「物価は下がるもの」「待てば安くなる」という意識を身につけました。

コンビニのおにぎりが100円台で買える。牛丼が500円以下。スマートフォンの通信費が月数千円まで下がる。これらは国際比較で見ると驚くほどの低価格です。

アメリカでは同等品質のサンドウィッチが$10〜$15(1500〜2000円)、牛丼相当のファストフードは$8〜$12。日本の物価水準の低さは、訪日外国人が「日本は安い!」と驚く現象として現れています。

「値上げ」が炎上する日本

2022〜2024年にかけて世界的なインフレが起き、日本でも物価上昇が続きました。この時期に起きたことが示唆的です。

コンビニのおにぎりが10〜20円値上げになるたびにSNSで「高い」「もう買えない」という反応が広がりました。カップ麺が数十円上がっても「値上げが許せない」という声が噴出しました。

同じ値上げ幅であれば、欧米ではほぼ誰も気にしません。インフレは「普通のこと」として認識されているからです。しかし日本では、30年間価格が上がらなかった経験が「値上げ=悪」という感覚を植え付けています。

「安さ」で勝つ戦略の限界

デフレマインドに乗る形で、日本では「安さ」を武器にする企業が大きくなりました。ユニクロ・ニトリ・マクドナルド(一時期の100円バーガー)など。

しかし「安さ」で差別化する戦略には天井があります。価格を下げ続ければ利益は消え、従業員への待遇も下がり、品質維持も困難になります。「デフレスパイラル」と呼ばれるこの悪循環は、日本経済全体を30年間停滞させた原因の一つです。

個別企業レベルでも、価格競争に引きずられると品質・ブランド・利益率すべてが悪化するリスクがあります。

「高くても売れる」メカニズムを理解する

一方で、日本には高価格でも売れる市場も確かに存在します。

① プレミアムセグメント: 品質・ブランド・希少性が明確に高い場合、相応の価格が許容されます。百貨店の高級食材、職人の手仕事品、有名ブランドのファッションなど。

② B2B市場: 消費者と違い、企業間取引では「安さ」より「品質・信頼性・ROI」が重視されます。コストダウンより効果に見合う投資という判断ができます。

③ 「特別な日」需要: ふだんは節約しても、誕生日・記念日・贈り物などの「特別な消費」ではプレミアムを許容します。ハレとケの使い分けが日本人の購買行動に根付いています。

欧米との価格感覚の違いが生む機会

欧米では、価格が「サービスの価値を示す指標」としても機能します。「安すぎるものは信頼できない」という感覚があり、適切な価格の設定がブランドの信頼性を高めます。

日本では逆に、安くても品質が高い→だからこそブランドの信頼が上がるというロジックが機能することがあります。ユニクロ・無印良品がその代表例です。

しかし近年、円安の進行・原材料費の上昇・人件費の改善が「価格を上げざるを得ない」状況を作り出しています。これは日本の消費者に「価格が上がることもある」という新しい認識を促す過渡期でもあります。

値上げを成功させるための原則は一つです。価格が上がることより「この価格に見合う価値があること」を先に伝える。値段より価値を語ることで、「高い」という反射的な反応を避け、「それだけの価値があるなら」という納得感につなげます。

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