LTV とユニットエコノミクス — 1顧客の生涯価値で考える
このレッスンでは、1人の顧客が生涯にもたらす価値 = LTV と、1人を獲得するのにかかる費用 = CAC、その比率で事業の健全性を測る「ユニットエコノミクス」を学びます。 単発の売上ではなく「1顧客あたりの採算」で考える視点を手に入れます。
なぜ「1顧客あたり」で考えるのか
「今月の売上30万円」という数字だけでは、その売上が健全かどうか判断できません。広告に40万円使って30万円売れたのなら赤字ですし、リピートが見込める商品なら初月赤字でも正解かもしれない。
そこで使うのがユニットエコノミクス — 事業全体ではなく「顧客1人」という最小単位(ユニット)で採算を見る考え方です。登場する数字は2つだけです。
- LTV(Life Time Value/顧客生涯価値) — 1人の顧客が取引期間全体でもたらす利益
- CAC(Customer Acquisition Cost/顧客獲得コスト) — 1人の顧客を獲得するのにかかった費用
LTV の計算式
LTV にはいくつかの式がありますが、まず覚えるべき基本形はこれです。
LTV = 平均購入単価 × 粗利率 × 平均購入回数(または平均継続期間)
月額制(サブスク型・コミュニティ型)なら、解約率(チャーンレート)を使った式が便利です。
LTV = 月額単価 × 粗利率 ÷ 月次解約率
例を2つ挙げます。
| 例 | 計算 | LTV |
|---|---|---|
| 単発の教材(1.5万円、粗利率90%、平均1.2回購入) | 15,000 × 0.9 × 1.2 | 16,200円 |
| 月額コミュニティ(3,000円、粗利率80%、月次解約率5%) | 3,000 × 0.8 ÷ 0.05 | 48,000円 |
ポイントは2つ。売上ではなく粗利で計算すること(決済手数料やプラットフォーム手数料を引く)。そして月額制では解約率の改善が LTV に直撃すること — 上の例で解約率を5%→4%にするだけで LTV は48,000円→60,000円に跳ねます。
CAC の計算式
CAC = 顧客獲得にかけた費用の合計 ÷ 新規顧客数
費用には広告費だけでなく、外注費や制作ツール代など獲得活動にかかった分を含めます。たとえば月10万円の広告+制作外注で20人が購入したなら、CAC は5,000円です。
発信者の場合、「広告を使っていないから CAC ゼロ」と考えがちですが、自分の制作時間も本来はコストです。少なくとも「有料施策を始めた瞬間に CAC の計測も始める」ことは徹底してください。
LTV/CAC 比 — 3倍ルール
ユニットエコノミクスの健全性は、この比率で判定します。
ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC
SaaS やサブスク業界で広く使われる目安は LTV/CAC が3以上です。1倍そこそこでは、獲得費を回収するだけで利益も再投資余力も残りません。逆に高すぎる(例: 10倍超)場合は「もっと獲得に投資して成長を買うべき」というサインと解釈されることもあります。
先ほどの月額コミュニティの例なら、LTV 48,000円 ÷ CAC 5,000円 = 9.6倍。これは「広告費を増やしても十分採算が合う」状態です。
3を下回ったときの打ち手は、分子と分母の2方向しかありません。
- LTV を上げる — 解約率を下げる(継続の仕組み、レッスン 6-3 の Retention)、客単価を上げる(上位プラン、関連商品)
- CAC を下げる — 成約率の高いチャネルへ予算を寄せる、ファネルのボトルネック改善で同じ費用から多く成約させる
発信者こそ LTV で考えるべき理由
フォロワー数や単発の売上は、前レッスンまでの言葉でいえば派手な遅行指標です。私が LTV を重視するのは、「信頼を積んで長く付き合う」という発信ビジネスの本質が、そのまま数字に表れるからです。煽って単発で売れば LTV は伸びません。丁寧に価値を届けて解約率が下がれば、同じフォロワー数でも事業の価値は何倍にもなります。
まとめ
- ユニットエコノミクス = 顧客1人あたりの採算。LTV(生涯価値)と CAC(獲得コスト)の2つで測る
- LTV は粗利ベースで計算。月額制なら「月額 × 粗利率 ÷ 解約率」
- 目安は LTV/CAC ≧ 3。下回ったら「解約率・客単価」か「獲得効率」のどちらかを直す