MySQL と MariaDB の違い — 分岐の歴史から実務の選び方まで

MySQL と MariaDB の違い — 分岐の歴史から実務の選び方まで

このレッスンでは、世界で最も使われているデータベースのひとつ MySQL と、その「双子の兄弟」である MariaDB の違いを学びます。なぜ2つに分かれたのかという歴史、ライセンスと開発体制の違い、そして実務でどちらを選べばいいのかまで、私が現場で判断している基準をお伝えします。

目次 (7)

まず用語から — データベースと RDBMS

データベースとは、データを整理して保存し、あとから検索・集計できるようにした仕組みです。その中でも MySQL と MariaDB は RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム) と呼ばれるタイプで、データを Excel のような「表(テーブル)」の形で持ち、SQL という共通言語で操作します。

WordPress のサイトを運営したことがある方なら、気づかないうちにどちらかを使っています。レンタルサーバーの管理画面に「MySQL」または「MariaDB」と書かれているはずです。

分岐の歴史 — Oracle 買収への危機感から生まれた MariaDB

両者の関係は「フォーク(fork)」という言葉で説明されます。フォークとは、オープンソースソフトウェアのソースコード(設計図)をコピーして、別プロジェクトとして開発を分岐させることです。

  • 1995年: MySQL が誕生。開発の中心人物はミカエル・ウィデニウス(通称 Monty)
  • 2008年: Sun Microsystems が MySQL を買収
  • 2009年: Oracle が Sun を買収すると発表。「商用データベース最大手の Oracle が、無料の競合 MySQL を握るのは危険だ」という危機感から、Monty 自身が MySQL をフォークして MariaDB を立ち上げ
  • 2012年: 中立的な非営利組織 MariaDB Foundation が設立され、オープンソースであり続けることを保証

つまり MariaDB は「MySQL の生みの親が、MySQL の自由を守るために作った分家」です。名前の Maria は Monty の娘の名前から取られています(ちなみに MySQL の My も娘の名前です)。

2026年時点のバージョンとライセンス

項目 MySQL MariaDB
開発主体 Oracle(一企業) MariaDB Foundation + コミュニティ
ライセンス GPLv2 + 商用のデュアルライセンス GPLv2(コミュニティ版は完全オープンソース)
最新 LTS 8.4 系(8.0 系は2026年4月にサポート終了) 12.3 LTS(2026年5月)、11.8 LTS も2028年までサポート
最新版 9.x イノベーションリリース(9.7 など) 四半期ごとのローリングリリース
有料版の位置づけ Enterprise 版に監査・スレッドプール等を限定 同等機能の多くがコミュニティ版に含まれる

ポイントは2つあります。

  1. ライセンスモデルの違い。MySQL は「無料のコミュニティ版」と「機能追加された有料の Enterprise 版」を使い分けるデュアルライセンス。MariaDB はコミュニティ版が GPLv2 の完全オープンソースで、MySQL なら有料の機能(スレッドプールなど)が無料版に含まれることが多いです
  2. リリースモデルの違い。MySQL は LTS(長期サポート版)とイノベーション版の2本立て。MariaDB は毎年 LTS を出し、3年間サポートする方式です

LTS(Long-Term Support)とは「長期間バグ修正とセキュリティ修正が保証されるバージョン」のことで、本番運用では基本的に LTS を選びます。

互換性 — 「ほぼ同じ」だが年々離れている

フォーク直後の MariaDB は MySQL の「ドロップイン代替(設定そのままで入れ替え可能)」を掲げており、MySQL 5.7 世代まではほぼそのまま移行できました。しかし MySQL 8.0 以降、両者は独自進化を続けており、今は「似ているが別物」と考えるのが安全です。

実務で引っかかりやすい違いを挙げます。

  • JSON 型: MySQL はバイナリ形式の専用 JSON 型を持つのに対し、MariaDB の JSON は LONGTEXT(長い文字列)の別名。動作は似ていますが内部実装が違います
  • レプリケーション(複製)やデータファイル形式: 8.0 以降の MySQL と MariaDB は相互互換ではなく、双方向の移行にはダンプ(SQL 書き出し)を介すのが基本
  • MariaDB 独自機能: 過去時点のデータを参照できるシステムバージョンテーブル、列指向の ColumnStore など、MySQL にない機能が多数あります
  • MySQL 9.x の新機能: AI 向けのベクトル型など、最新機能は MariaDB と仕様が異なります

どちらを選ぶか — 私の判断基準

状況 私のおすすめ
レンタルサーバーや WordPress 運用 サーバーに入っている方をそのまま使う(違いを意識する場面はほぼない)
AWS/GCP などのマネージドサービス利用 クラウド側のサポートが手厚い MySQL 系(RDS、Cloud SQL など)が無難
完全オープンソースにこだわる、Oracle 依存を避けたい MariaDB
既存システムが MySQL 8.x で稼働中 互換性が離れているので、無理に MariaDB へ移行しない

マーケターとして押さえるべき結論はシンプルです。SQL の書き方は9割以上共通なので、どちらかで SQL を学べばもう片方でもほぼそのまま使えます。 違いが効いてくるのはインフラ選定や移行の場面であり、その時は「8.0 以降は互換性が薄れている」ことだけ思い出してください。

まとめ

  • MariaDB は、Oracle による買収を機に MySQL の生みの親がフォークした「分家」
  • MySQL は Oracle 主導のデュアルライセンス、MariaDB は財団主導の完全オープンソース
  • MySQL 5.7 世代までは互換性が高かったが、8.0 以降は別々に進化しており移行は要注意
  • SQL スキル自体はほぼ共通。マーケターはまず SQL を学べば両方で通用する

参考

参考になったら ♡
青野俊樹(現役マーケター)

現役マーケターとして、マーケティングを軸に気になったテーマを調べて体系立てて発信しています。 運営方針 は メディアについて をご覧ください。