マーケティングの教科書 / コース10 — 決算資料で学ぶマーケの教科書 / レッスン 10-2
コース10 — 決算資料で学ぶマーケの教科書事例分析 — 決算資料から見える3社のマーケティング手法
所要時間: 9分 | 更新: 2026-06-11
このレッスンでは、10-1 の読み方を使って、実際に日本の上場企業3社のマーケティング手法を決算資料・公開情報から読み解きます。選んだのは、マーケのモデルが対照的な3社 — サイバーエージェント(広告・メディア)、メルカリ(マーケットプレイス)、MonotaRO(BtoB EC)です。
※ 数値はいずれも執筆時点(2026-06-11)で各社 IR 資料・公開情報から確認できたものです。会計期間に注意してください。
事例1: サイバーエージェント — 事業ポートフォリオで「投資の順番」を見せる
サイバーエージェント(4751、9月期決算)の決算説明会資料の特徴は、広告・ゲーム・メディア&IP という事業ポートフォリオの見せ方です。
- 2025年9月期は、ABEMA を中心とするメディア&IP 事業が10年ぶりに黒字化したことが大きなトピックでした
- 2026年9月期は連結売上高 8,800 億円(前期比 +0.7%)を見込み、広告事業とメディア&IP 事業の増収継続を掲げています
マーケ目線の学び: 同社は長年「広告・ゲームで稼ぎ、ABEMA に先行投資する」という構図を資料で説明し続けてきました。赤字事業を「許容する投資」として投資家に納得させるストーリーテリングは、社内で新規施策の予算を通すときの説明構造とまったく同じです。
事例2: メルカリ — GMV を頂点にした KPI ツリーと「攻めどき」の説明
メルカリ(4385、6月期決算)の資料は、マーケットプレイス事業の GMV(流通取引総額) を中心 KPI に置き、その分解(利用者数 × 利用頻度 × 単価)で成長を説明するスタイルです。
- FY2025.6 3Q は GMV 2,923 億円(前年同期比 +6%)。AI/LLM を活用した UI/UX 刷新や高価格帯カテゴリ強化というプロダクト施策を成長要因として説明しています
- 同四半期は「超メルカリ市」(2025年2〜3月)という大型マーケティング施策を実施しつつ、調整後コア営業利益率 37% を通期目標レンジ内で維持、と「攻めながら規律を守る」見せ方をしています
マーケ目線の学び: 大型キャンペーンを打つときに「利益率レンジを守りながら」と必ずセットで語る点です。マーケ投資は金額ではなく利益率ガードレール付きの投資枠として設計・説明する — 社内の予算交渉でそのまま使える型です。
事例3: MonotaRO — LTV 基準の顧客育成投資とデータドリブン組織
工場用間接資材の BtoB EC、MonotaRO(3064、12月期決算)は、データドリブンマーケの教科書のような会社です。
- 顧客を Micro / Small / Mid / Large のセグメントに分け、セグメント別に施策を最適化する戦略を採っています
- 期待 LTV に基づいた顧客育成投資 — 新規獲得コストだけでなく生涯価値を見据えて投資する考え方を公言しています
- 販促は E メール・アプリ Push(オンライン)とカタログ・チラシ(オフライン)のマルチチャネルを行動データで統合
- データマーケティング部門は約 90 名、約 6 割がエンジニアという組織構成が紹介されています
マーケ目線の学び: コース6-4 で学んだ LTV/CAC の考え方を、BtoB EC の実務として 20 年近く積み上げてきた実例です。「マーケ部門の過半がエンジニア」という組織設計は、これからのマーケ組織の一つの到達点だと私は見ています。
3社の対比
| 会社 | 中心 KPI | マーケ投資の語り方 |
|---|---|---|
| サイバーエージェント | 事業別売上・利益 | 稼ぐ事業 → 投資事業への資源配分の物語 |
| メルカリ | GMV とその分解 | 利益率レンジを守る規律付きの大型投資 |
| MonotaRO | 顧客セグメント別 LTV | 期待 LTV 基準の育成投資・データ組織 |
まとめ
- 同じ「決算説明会資料」でも、ビジネスモデルによって KPI の置き方がまったく違う
- 3社に共通するのは「投資の理由を数字の構造で説明する」こと
- 学んだ型(投資の物語/ガードレール付き投資/LTV 基準投資)は社内の予算説明にそのまま転用できる