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コース9 — データベースの教科書MySQL と MariaDB の違い — 分岐の歴史から実務の選び方まで
所要時間: 8分 | 更新: 2026-06-11
このレッスンでは、世界で最も使われているデータベースのひとつ MySQL と、その「双子の兄弟」である MariaDB の違いを学びます。なぜ2つに分かれたのかという歴史、ライセンスと開発体制の違い、そして実務でどちらを選べばいいのかまで、私が現場で判断している基準をお伝えします。
まず用語から — データベースと RDBMS
データベースとは、データを整理して保存し、あとから検索・集計できるようにした仕組みです。その中でも MySQL と MariaDB は RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム) と呼ばれるタイプで、データを Excel のような「表(テーブル)」の形で持ち、SQL という共通言語で操作します。
WordPress のサイトを運営したことがある方なら、気づかないうちにどちらかを使っています。レンタルサーバーの管理画面に「MySQL」または「MariaDB」と書かれているはずです。
分岐の歴史 — Oracle 買収への危機感から生まれた MariaDB
両者の関係は「フォーク(fork)」という言葉で説明されます。フォークとは、オープンソースソフトウェアのソースコード(設計図)をコピーして、別プロジェクトとして開発を分岐させることです。
- 1995年: MySQL が誕生。開発の中心人物はミカエル・ウィデニウス(通称 Monty)
- 2008年: Sun Microsystems が MySQL を買収
- 2009年: Oracle が Sun を買収すると発表。「商用データベース最大手の Oracle が、無料の競合 MySQL を握るのは危険だ」という危機感から、Monty 自身が MySQL をフォークして MariaDB を立ち上げ
- 2012年: 中立的な非営利組織 MariaDB Foundation が設立され、オープンソースであり続けることを保証
つまり MariaDB は「MySQL の生みの親が、MySQL の自由を守るために作った分家」です。名前の Maria は Monty の娘の名前から取られています(ちなみに MySQL の My も娘の名前です)。
2026年時点のバージョンとライセンス
| 項目 | MySQL | MariaDB |
|---|---|---|
| 開発主体 | Oracle(一企業) | MariaDB Foundation + コミュニティ |
| ライセンス | GPLv2 + 商用のデュアルライセンス | GPLv2(コミュニティ版は完全オープンソース) |
| 最新 LTS | 8.4 系(8.0 系は2026年4月にサポート終了) | 12.3 LTS(2026年5月)、11.8 LTS も2028年までサポート |
| 最新版 | 9.x イノベーションリリース(9.7 など) | 四半期ごとのローリングリリース |
| 有料版の位置づけ | Enterprise 版に監査・スレッドプール等を限定 | 同等機能の多くがコミュニティ版に含まれる |
ポイントは2つあります。
- ライセンスモデルの違い。MySQL は「無料のコミュニティ版」と「機能追加された有料の Enterprise 版」を使い分けるデュアルライセンス。MariaDB はコミュニティ版が GPLv2 の完全オープンソースで、MySQL なら有料の機能(スレッドプールなど)が無料版に含まれることが多いです
- リリースモデルの違い。MySQL は LTS(長期サポート版)とイノベーション版の2本立て。MariaDB は毎年 LTS を出し、3年間サポートする方式です
LTS(Long-Term Support)とは「長期間バグ修正とセキュリティ修正が保証されるバージョン」のことで、本番運用では基本的に LTS を選びます。
互換性 — 「ほぼ同じ」だが年々離れている
フォーク直後の MariaDB は MySQL の「ドロップイン代替(設定そのままで入れ替え可能)」を掲げており、MySQL 5.7 世代まではほぼそのまま移行できました。しかし MySQL 8.0 以降、両者は独自進化を続けており、今は「似ているが別物」と考えるのが安全です。
実務で引っかかりやすい違いを挙げます。
- JSON 型: MySQL はバイナリ形式の専用 JSON 型を持つのに対し、MariaDB の JSON は LONGTEXT(長い文字列)の別名。動作は似ていますが内部実装が違います
- レプリケーション(複製)やデータファイル形式: 8.0 以降の MySQL と MariaDB は相互互換ではなく、双方向の移行にはダンプ(SQL 書き出し)を介すのが基本
- MariaDB 独自機能: 過去時点のデータを参照できるシステムバージョンテーブル、列指向の ColumnStore など、MySQL にない機能が多数あります
- MySQL 9.x の新機能: AI 向けのベクトル型など、最新機能は MariaDB と仕様が異なります
どちらを選ぶか — 私の判断基準
| 状況 | 私のおすすめ |
|---|---|
| レンタルサーバーや WordPress 運用 | サーバーに入っている方をそのまま使う(違いを意識する場面はほぼない) |
| AWS/GCP などのマネージドサービス利用 | クラウド側のサポートが手厚い MySQL 系(RDS、Cloud SQL など)が無難 |
| 完全オープンソースにこだわる、Oracle 依存を避けたい | MariaDB |
| 既存システムが MySQL 8.x で稼働中 | 互換性が離れているので、無理に MariaDB へ移行しない |
マーケターとして押さえるべき結論はシンプルです。SQL の書き方は9割以上共通なので、どちらかで SQL を学べばもう片方でもほぼそのまま使えます。 違いが効いてくるのはインフラ選定や移行の場面であり、その時は「8.0 以降は互換性が薄れている」ことだけ思い出してください。
まとめ
- MariaDB は、Oracle による買収を機に MySQL の生みの親がフォークした「分家」
- MySQL は Oracle 主導のデュアルライセンス、MariaDB は財団主導の完全オープンソース
- MySQL 5.7 世代までは互換性が高かったが、8.0 以降は別々に進化しており移行は要注意
- SQL スキル自体はほぼ共通。マーケターはまず SQL を学べば両方で通用する
参考
- https://mariadb.com/docs/release-notes/community-server/about/compatibility-and-differences/mariadb-vs-mysql-compatibility
- https://mariadb.org/mariadb/all-releases/
- https://dev.mysql.com/blog-archive/introducing-mysql-innovation-and-long-term-support-lts-versions/
- https://www.mysql.com/downloads/
- https://mariadb.org/about/